「叱ることが成長につながる」と信じているあなた、その信念は本当に正しいのでしょうか？叱責が部下の成長を促し、強くするという考え方は、古くから受け継がれてきました。「根性論」にも繋がる考え方です。しかし、実際にはその方法が逆効果を生む方が圧倒的に多いのが現実なのです。今回は、叱ることが本当に必要なのか、そしてより効果的な指導方法について考えていきましょう。
叱ることは本当に必要なのか？
部下のミスや態度に対して「叱るべきか、それとも静かに見守るべきか」──多くの上司が一度は悩むテーマです。叱ることで成長を促せるのか、それとも信頼関係を損なってしまうのか。本記事では、現代のマネジメントにおいて「叱ること」は本当に必要なのか、その意味や効果を多角的に掘り下げ、適切な関わり方のヒントを探ります。
叱られた経験は成長の糧になるのか？
多くの人が叱られることに対してネガティブな感情を抱くのは自然なことです。しかし、叱られることで自分の行動を振り返り、成長につながるという意見もあります。叱責が効果を持つのは、叱る側が相手の成長を心から願い、適切なタイミングで行われる場合のみです。叱られることが恐怖やストレスを引き起こすだけでは、逆にモチベーションを下げる原因になります。
つまり、自分の怒りをぶつけてストレス発散するだけの「叱る」は部下にとって成長どころか、労働意欲の著しい低下や反発心を芽生えさせる結果にしかなりません。
人間に備わる厄介な「処罰感情」の存在
厄介なことに、人間には「処罰感情」というものが古来より強くあります。法を犯した者、従順に従わない者、反乱を起した者を残酷に処刑してきた歴史が世界中にあり、そしてそれは日本人のDNAにも刻まれています。
「怒る」、「罰する」ことでドーパミンが放出されカタルシスを得られるのです。テレビの時代劇などで悪人が成敗されるとスカッとする感情などもこれに類しますね。
これが仕事でも部下がミスをした、仕事の内容が悪い、進化が見られないなどに対して発生して、「叱る」ことで「処分してやった」という自己満足に浸るようになるのです。部下に頭を下げさせる、「申し訳ありません」「すみませんでした」を引き出すことで、“言わせてやった”とカタルシスを得てむなしい優越感に浸っているだけなのです。“感情”をつぶけてるだけなのです。
つまり多くの労働現場で見られる「叱る」行為は単なる自己満足やストレス発散の八つ当たりで叱っているケースが大半ということ。当然部下にはそれはわかります。口先だけ「お前のためを思って」とか「厳しさの中にしか成長はない」と綺麗事を言っても、それが嘘であることはすぐわかります。
「叱る」ことが効果があるとすれば、処罰感情の自己満足によるものでなく、本気で部下の成長を願う気持ちから動く場合です。それであっても、感情的な物言いでは部下は心を閉ざします。「叱る」という発想ではなく「伝える」「気づかせる」スタンスが必要なのです。
叱ることのリスクと影響
叱責にはリスクが伴います。特に、部下や選手の性格や状況を考慮せずに感情的に叱ってしまうと、信頼関係が崩れ、離職や退部を招く原因になりかねません。また、叱責が頻繁に行われる環境では、心理的安全性が損なわれ、チャレンジすることをためらうようになります。このような環境では、成長どころか逆に能力が低下してしまうこともあります。
叱れば叱るほど愛社精神は下がり続けるのです。
成長を妨げる環境の実例
ある企業では、上司が部下に対して厳しい叱責を繰り返していました。その結果、部下たちは上司に対する恐怖心から意見を言えなくなり、脳が萎縮することで脳機能が低下して創造的な発想が生まれなくなってしまいました。最終的には、優秀な人材が次々と退職し、チームの士気は低下しました。このように、叱ることが逆効果を生むことは多々あります。
スポーツ界における叱責の弊害
スポーツ界でも、叱ることが必ずしも選手の成長を促すわけではありません。あるチームでは、監督が選手を厳しく叱っていたため、選手たちがプレッシャーに押し潰され、自信を失ってしまいました。その結果、チームは成績が振るわず、選手たちのモチベーションも低下するという悪循環に陥りました。
叱ると怒るの違い
叱ることと怒ることは、一見似ているようで実は大きな違いがあります。この二つの行為は、相手に与える影響や意図する結果が異なるため、理解しておくことが重要です。
叱るとは？
叱ることは、相手の行動や考え方に対して注意を促し、改善を促すための行為です。叱る際には、相手の成長を見据えているため、感情的にならず冷静に事実を指摘します。叱ることで相手は自分の行動を振り返り、次回に生かすための学びを得ることができます。たとえば、職場でのミスを叱ることで、その人が同じ過ちを繰り返さないようにすることが目的です。
怒るとは？
一方で、怒ることは感情に基づいた反応であり、しばしば相手を非難したり、攻撃したりすることにつながります。怒りは一時的な感情であるため、相手に対する理解や配慮が欠けることが多く、結果としてコミュニケーションが破綻しやすいのが特徴です。怒られた側は恐怖や不安を感じ、心理的な負担を負うことになります。これでは、成長の機会を失ってしまうことにもなりかねません。
特に仕事にかこつけてストレスをぶつけて八つ当たりで部下を叱る行為は最悪の悪手で、これはもう完全にパワハラ案件となります。
どう叱るのか？
人材育成においては、部下を腐らせずに叱ることの重要性が再認識されています。叱ることで相手の行動を改めさせるだけでなく、適切なフィードバックを通じて成長を促すことができます。相手を叱る際には、具体的な事実をもとに指摘し、どのように改善すればよいかを共に考える姿勢が求められます。叱り方次第で、相手との信頼関係も築くことができるのです。
叱ると怒るの違いを認識していないと部下から徹底的に嫌われる
叱ることと怒ることの違いを理解することで、効果的なコミュニケーションが可能になります。人材育成においては、叱ることが成長を促すための重要な手段であることを忘れずに、相手の成長を支える姿勢を持つことが大切です。感情的な怒りではなく、冷静で建設的な叱り方を心がけることで、より良い職場環境を作り出しましょう。
叱る以外のアプローチは何か？
叱ることで委縮させてしまうリスクがある一方で、適切な関わり方を選べば、信頼と成長を両立させることも可能です。本記事では、「叱る」に頼らずに部下を導くための実践的なアプローチや、対話・フィードバックを活かしたマネジメントのあり方を考察します。
ポジティブフィードバックの重要性
叱ることが効果的でない場合、どのように指導を行うべきでしょうか？ひとつの答えが、ポジティブフィードバックです。成果を出したときや努力を認めることで、自信を持たせることができます。ポジティブな強化は、自主性やモチベーションを高める要素となり、結果的に成長を促すことにつながります。
建設的なフィードバックの方法
叱るのではなく、建設的なフィードバックを行う方法もあります。具体的には、行動に対する具体的な指摘と共に、改善策を提案することです。このアプローチは、相手にとって実践可能な解決策を示すことができ、次回の行動に繋がります。また、叱責を避けつつも、相手の成長を促すことが可能になります。
コミュニケーションの重要性
効果的な指導には、良好なコミュニケーションが欠かせません。上司や指導者は、部下や選手の意見を尊重し、信頼関係を築くことが重要です。オープンな対話を通じて、相手の考えや感じていることを理解し、適切なアプローチを見つけることができます。
目標設定と進捗確認
目標を設定し、その進捗を定期的に確認することも重要です。目標達成に向けたサポートを提供し、成功体験を積むことで、自然と成長を促すことができるでしょう。また、達成した際には、その努力を称えることで、さらなるモチベーションを引き出すことができます。
メンターシップの導入
叱る代わりに、メンターシップを導入することも有効です。経験豊富な先輩が部下や選手をサポートすることで、彼らの成長を促すことができます。メンターは、叱責ではなく、指導やアドバイスを通じて成長を助ける存在です。
フィードバックの文化を作る
フィードバックを受け入れる文化を作ることも重要です。ポジティブなフィードバックだけでなく、建設的な批判も受け入れられる環境を整えることで、成長を促進することができます。チーム全体がフィードバックを大切にすることで、個々の成長が全体の成果につながります。
褒めて伸ばす重要性
「叱る」ことが教育や育成において必要かどうかという議論は、長年にわたり続けられてきました。一方で、「褒めて伸ばす」アプローチが注目を浴びているのも事実です。ここでは、褒めることの重要性とその効果について考察します。
自信を育む
褒めることは、個人の自信を育む上で非常に効果的です。子どもや部下が何かを達成した際にその努力や成果を認めることで、自己肯定感が高まり、次の挑戦への意欲が湧きます。特に、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する姿勢を養うためには、褒めることが重要です。
成果を引き出す
褒めることで、相手のモチベーションを引き出すことができます。「あなたならできる」といった言葉は、相手に対する期待や信頼を示し、その人が自分の能力を信じるきっかけとなります。結果として、より高い成果を上げることが期待できるのです。
良好な人間関係の構築
褒めることは、コミュニケーションの潤滑油としても機能します。相手を認め、感謝の意を示すことで、信頼関係が深まり、良好な人間関係が築かれます。これにより、職場や家庭内での協力やチームワークが向上し、より良い結果を生む土壌が整います。
失敗を恐れない環境作り
褒める文化が根付いた環境では、失敗を恐れずに新しい挑戦をすることが促されます。失敗を叱責するのではなく、その過程を評価し、次にどうすれば良いかを考える姿勢が育まれます。このような環境は、特にクリエイティブな発想が求められる場面で重要です。
結論
「褒めて伸ばす」アプローチは、単に良い結果を得るための手段だけでなく、人間としての成長や関係性の向上にも寄与します。叱ることが必要な場面もありますが、まずは褒めることで相手の可能性を引き出し、共に成長していくことが重要です。この考え方が広まり、より良い社会が築かれることを願っています。
「叱って育てる」は無意味ということ
叱ることが必ずしも成長を促すわけではありません。むしろ、適切な指導方法やコミュニケーションを通じて、部下や選手の成長をサポートすることが重要です。「叱る」ことを見直し、ポジティブな環境を築くことで、より良い成果を得ることができるでしょう。人材育成は一方通行ではなく、互いに学び合うプロセスであることを忘れずに、より良い指導者を目指しましょう。
人間は感情の生き物です。その「感情」を踏みにじるような言動･行為から、部下のやる気や愛社精神は絶対に芽生えない。労働意欲も愛社精神も成長もすべて奪ってしまうことを認識しましょう。
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